にんにく専門情報

出典:書籍|Plant-Based Therapeutics, Volume 3: Allium sativum (Garlic)|植物由来治療薬、第3巻 ねぎ(ニンニク)

DATSの心血管保護作用を詳しく解説

1. 核心メカニズム:H2Sドナーとしての働き

これまで血管を広げる物質としては「一酸化窒素(NO)」が有名でしたが、近年の研究(および本書)では、DATSが体内で分解されることで生じる**硫化水素(H2S)**が、第3のガス状シグナル伝達物質として極めて重要な役割を果たすことが強調されています。

  • プロセス: DATSは赤血球や血管組織にある「グルタチオン」などのチオール基を持つ物質と反応し、速やかにH2Sを放出します。
  • 作用: 放出されたH2Sは、血管の平滑筋細胞にある**ATP感受性カリウムチャネル**を開きます。
  • 結果: これにより細胞膜が過分極(マイナスに傾く)し、カルシウムの流入が抑制されることで平滑筋が緩み、血管が拡張して血圧が下がります。

ポイント: DATSは、不安定な「アリシン」よりも安定してH2Sを供給できるため、持続的な血圧降下作用が期待されています。

2. 虚血再灌流障害(Ischemia-Reperfusion Injury)の軽減

心筋梗塞などで血流が止まり(虚血)、その後血流が再開した(再灌流)瞬間に、大量の活性酸素が発生して心臓の組織が激しいダメージを受ける現象を「虚血再灌流障害」と言います。
DATSには、このダメージから心臓を守る効果が記述されています。

  • 抗酸化シグナルの活性化: DATSは、細胞内の防御システムであるNrf2経路を活性化させ、抗酸化酵素(ヘムオキシゲナーゼ-1など)の産生を増やします。
  • 心筋細胞の保護: これにより、再灌流時の酸化ストレスによる細胞死(アポトーシス)を食い止め、心筋梗塞の範囲(梗塞サイズ)を縮小させる効果が動物実験などで示されています。

3. 抗血小板作用(血液凝固の抑制)

いわゆる「血液をサラサラにする」効果です。

  • メカニズム: DATSは血小板の凝集(固まること)を阻害します。具体的には、血小板内のトロンボキサン生成や、カルシウム動員を抑制することで、血栓ができるのを防ぎます。
  • 意義: これにより、動脈硬化の進行や、脳卒中・心筋梗塞の直接的な原因となる血栓形成のリスクを低減します。

4. 血管内皮機能の改善

血管の内側を覆う「内皮細胞」は、血管の健康を保つ司令塔です。

  • 炎症の抑制: 高血糖や高脂血症によって血管内皮が炎症を起こすと動脈硬化が始まりますが、DATSは炎症性サイトカイン(NF-κB経路など)を抑え、血管内皮を健全な状態に保ちます。

まとめ:DATSの心血管に対する多面的なアプローチ

この書籍におけるDATSの評価をまとめると、単に「血圧を下げる」だけでなく、以下の3方向から心血管系を守る**「マルチターゲットな治療薬候補」**であると言えます。

  1. 物理的拡張: H2Sを発生させて血管を広げる(即効性)。
  2. 防御力強化: 心臓の細胞そのものを酸化ストレスから守る(細胞保護)。
  3. 環境改善: 血栓を防ぎ、血管の炎症を抑える(予防)。

このように、DATSはニンニクの心血管保護作用における「主役級」の成分として扱われています。


書籍:植物由来治療薬-第3巻ねぎ(ニンニク)|ジアリルトリスルフィド
ジアリルトリスルフィド(DATS)に関する記述の要約
ジアリルトリスルフィド(DATS)の抗がん活性が実証されている主な部位
ジアリルトリスルフィド(DATS)の心血管保護作用
ジアリルトリスルフィド(DATS)の免疫原性細胞死について

書籍:植物由来治療薬-第3巻ねぎ(ニンニク)|乳癌
乳癌に関する記述の抜粋
乳癌の予防や治療
前癌状態のヒト乳腺細胞

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