にんにく専門情報

書籍: Plant-Based Therapeutics, Volume 3: Allium sativum (Garlic)
植物由来治療薬、第3巻 ねぎ(ニンニク)2025年11月21日発刊 Ivan A. Ross著

ジアリルトリスルフィド(DATS)に関する記述の要約

「ジアリルトリスルフィド(DATS)は、ニンニク油に含まれる主要な有機硫黄化合物であり、アリシンの分解過程で生成されます。これは、ニンニクの薬理学的活性を担う最も強力な生理活性成分の一つと考えられています。
DATSは、複数のメカニズムを通じて強力な抗がん作用を示します。乳がん、結腸がん、骨肉腫細胞など、様々ながん細胞株において、細胞周期停止およびアポトーシス(プログラムされた細胞死)を誘導することが実証されています。重要なメカニズムの一つとして、細胞表面におけるカルレティキュリン(CRT)の発現上昇が挙げられ、これにより免疫系ががん細胞を認識・排除する能力が高まります。さらに、DATSは硫化水素(H2S)のドナー(供給源)として機能し、血管作動性を介在することで心血管保護に寄与しますが、その応用は水への溶解性の低さと安定性の低さという課題も抱えています。」

要約と解説

この書籍においてDATSは、特に以下の点で重要な化合物として位置づけられています:

  • 抗がん活性の主役: ニンニク由来成分の中でも特に強力な抗がん作用を持ち、がん細胞の増殖抑制、DNA損傷の防止、血管新生(がんへの栄養血管の形成)の阻害に関与します。
  • 免疫原性細胞死: カルレティキュリン(CRT)の発現を促すことで、がん細胞を「免疫系に見つけやすくする」作用があることが強調されています。
  • 心血管への効果: 体内で硫化水素(H2S)を生成することで血管を拡張させ、心機能を保護する役割についても言及されています。

効果が記述されている主な部位(がんの種類)

書籍内で具体的に言及されている部位は以下の通りです。

  • 乳がん (Breast Cancer)
    • 対象: 特に「ヒト乳管上皮細胞(MCF-10AT1)」や「エストロゲン受容体陽性乳がん細胞」など。
    • 効果: 発がん性物質(ベンゾ[a]ピレンなど)による腫瘍化(neoplastic transformation)を抑制する**「化学予防(Chemoprevention)」**効果が強調されています。
    • メカニズム: 細胞周期の停止、酸化ストレスの軽減、DNA損傷の減少、アポトーシス(細胞死)の誘導。
  • 骨肉腫 (Osteosarcoma)
    • 対象: ヒト骨肉腫細胞株(Saos-2など)。
    • 効果: がん細胞の増殖抑制と形態変化。
    • メカニズム: 特に**「カルレティキュリン(CRT)」**というタンパク質を細胞表面に表出させ、免疫細胞ががんを認識しやすくする(免疫原性細胞死の誘導)メカニズムが詳述されています。
  • 結腸直腸がん (Colorectal Carcinogenesis)
    • 効果: がん細胞の増殖抑制。
    • メカニズム: 細胞周期の停止(G2/M期停止などが一般的)やアポトーシス誘導によるものとされます。
  • 肝がん (Hepatocellular Carcinogenesis)
    • 対象: HepG2細胞など。
    • 効果: 増殖の抑制。
    • 補足: 書籍では、DATSだけでなく、類似成分のDAS(ジアリルスルフィド)と併せて議論されることが多いですが、DATSも肝がん細胞に対して強力な阻害作用を持つことが記されています。
  • その他(章立てや関連記述がある部位)
    • 婦人科系がん (Gynecological Cancers): 具体的な細胞株についての言及が含まれます。
    • 前立腺がん (Prostate Cancer)
    • 胃がん (Gastric Cancer)

まとめ:どのレベルで「実証」されているか

この書籍での記述は、主に**基礎研究(細胞実験・動物実験)**の成果に基づいています。

  • 「がん細胞の増殖を止める」
  • 「がん細胞を自殺(アポトーシス)させる」
  • 「発がん物質による正常細胞のがん化を防ぐ(予防)」

といった効果が、上記の部位で確認されていると説明されています。


DATSの**免疫原性細胞死(Immunogenic Cell Death: ICD)**について、わかりやすく解説

一言で言うと、**「がん細胞が死ぬ際に、自ら『私は敵だ!』という目印(旗)を掲げて死ぬことで、警察役である免疫細胞(T細胞など)を呼び寄せ、他のがん細胞への攻撃も促す」**という特殊な死に方です。
通常、細胞がひっそりと死ぬ(アポトーシス)のとは異なり、免疫システムを「本気モード」に切り替えるスイッチが入るのが最大の特徴です。

1. なぜ「免疫原性」と呼ばれるのか?

通常、私たちの体内で古い細胞が死ぬとき(通常のアポトーシス)は、免疫系を刺激せずに静かに掃除されます。これを「免疫沈黙(Immunologically Silent)」な死と呼びます。
しかし、**免疫原性細胞死(ICD)では、がん細胞が死ぬ過程で特定のシグナル物質を放出・提示します。これが免疫細胞にとっての「警報」となり、「ここで敵が死んだぞ! 他にも同じ敵がいるかもしれないから探して攻撃しろ!」**という指令が出されます。
結果として、死んだがん細胞が一種の**「がんワクチン」**のような役割を果たし、生き残っている他のがん細胞に対する攻撃力が劇的に高まります。

2. DATSが引き起こす「目印(Eat Meシグナル)」の正体

書籍『Plant-Based Therapeutics』で強調されているDATSの作用メカニズムは、このICDのプロセスにおいて非常に重要な役割を果たしています。
具体的には、以下の3つのステップで免疫を活性化させます。

  1. 「私を食べて!」シグナル(Eat Me Signal)
    • 主役: カルレティキュリン (Calreticulin: CRT)
    • DATSの作用: DATSは、通常は細胞の内部(小胞体)に隠れている「カルレティキュリン」というタンパク質を、がん細胞の表面(膜の外側)に強制的に移動させます。
    • 結果: 免疫の司令塔である「樹状細胞」は、このカルレティキュリンを目印にしてがん細胞を見つけ、バクッと食べます(貪食)。これが免疫攻撃のスタート合図になります。
    • 書籍ではこの「CRTの表面露出」がDATSの重要なメカニズムとして挙げられています。
  2. 「私を見つけて!」シグナル(Find Me Signal)
    • 主役: ATP(アデノシン三リン酸)
    • 死に行くがん細胞からATPが細胞外へ放出されます。これが「誘引物質」となり、遠くにいる免疫細胞を現場におびき寄せます。
  3. 「危険だぞ!」シグナル(Danger Signal)
    • 主役: HMGB1(タンパク質の一種)
    • 核の中にあったHMGB1が細胞外に漏れ出し、免疫細胞をさらに強く刺激・成熟させます。

3. つまり、DATSによる治療のメリットとは?

DATSがこの「免疫原性細胞死」を引き起こすということは、単に薬の毒性でがん細胞を殺すだけでなく、**「患者自身の免疫力を利用して、がんを根絶やしにする手助けをする」**ことを意味します。

  • 相乗効果: DATSでダメージを受けたがん細胞が免疫を刺激するため、もし生き残ったがん細胞があっても、活性化した免疫細胞(キラーT細胞)によって追撃・排除される可能性が高まります。
  • 再発予防: 一度免疫系がそのがん細胞の特徴を覚えれば、将来的な再発や転移を防ぐ効果(免疫記憶)も期待できます。

まとめ

DATSは、がん細胞をただ殺すだけでなく、「がん細胞の死に顔」を「免疫系を怒らせる形」に変えることで、体全体の抗がん免疫力をブーストさせる働きがある、というのがこのメカニズムの核心です。

DATSの心血管保護作用を詳しく解説

1. 核心メカニズム:H2Sドナーとしての働き

これまで血管を広げる物質としては「一酸化窒素(NO)」が有名でしたが、近年の研究(および本書)では、DATSが体内で分解されることで生じる**硫化水素(H2S)**が、第3のガス状シグナル伝達物質として極めて重要な役割を果たすことが強調されています。

  • プロセス: DATSは赤血球や血管組織にある「グルタチオン」などのチオール基を持つ物質と反応し、速やかにH2Sを放出します。
  • 作用: 放出されたH2Sは、血管の平滑筋細胞にある**ATP感受性カリウムチャネル**を開きます。
  • 結果: これにより細胞膜が過分極(マイナスに傾く)し、カルシウムの流入が抑制されることで平滑筋が緩み、血管が拡張して血圧が下がります。

ポイント: DATSは、不安定な「アリシン」よりも安定してH2Sを供給できるため、持続的な血圧降下作用が期待されています。

2. 虚血再灌流障害(Ischemia-Reperfusion Injury)の軽減

心筋梗塞などで血流が止まり(虚血)、その後血流が再開した(再灌流)瞬間に、大量の活性酸素が発生して心臓の組織が激しいダメージを受ける現象を「虚血再灌流障害」と言います。
DATSには、このダメージから心臓を守る効果が記述されています。

  • 抗酸化シグナルの活性化: DATSは、細胞内の防御システムであるNrf2経路を活性化させ、抗酸化酵素(ヘムオキシゲナーゼ-1など)の産生を増やします。
  • 心筋細胞の保護: これにより、再灌流時の酸化ストレスによる細胞死(アポトーシス)を食い止め、心筋梗塞の範囲(梗塞サイズ)を縮小させる効果が動物実験などで示されています。

3. 抗血小板作用(血液凝固の抑制)

いわゆる「血液をサラサラにする」効果です。

  • メカニズム: DATSは血小板の凝集(固まること)を阻害します。具体的には、血小板内のトロンボキサン生成や、カルシウム動員を抑制することで、血栓ができるのを防ぎます。
  • 意義: これにより、動脈硬化の進行や、脳卒中・心筋梗塞の直接的な原因となる血栓形成のリスクを低減します。

4. 血管内皮機能の改善

血管の内側を覆う「内皮細胞」は、血管の健康を保つ司令塔です。

  • 炎症の抑制: 高血糖や高脂血症によって血管内皮が炎症を起こすと動脈硬化が始まりますが、DATSは炎症性サイトカイン(NF-κB経路など)を抑え、血管内皮を健全な状態に保ちます。

まとめ:DATSの心血管に対する多面的なアプローチ

この書籍におけるDATSの評価をまとめると、単に「血圧を下げる」だけでなく、以下の3方向から心血管系を守る**「マルチターゲットな治療薬候補」**であると言えます。

  1. 物理的拡張: H2Sを発生させて血管を広げる(即効性)。
  2. 防御力強化: 心臓の細胞そのものを酸化ストレスから守る(細胞保護)。
  3. 環境改善: 血栓を防ぎ、血管の炎症を抑える(予防)。

このように、DATSはニンニクの心血管保護作用における「主役級」の成分として扱われています。


書籍:植物由来治療薬-第3巻ねぎ(ニンニク)|ジアリルトリスルフィド
ジアリルトリスルフィド(DATS)に関する記述の要約
ジアリルトリスルフィド(DATS)の抗がん活性が実証されている主な部位
ジアリルトリスルフィド(DATS)の心血管保護作用
ジアリルトリスルフィド(DATS)の免疫原性細胞死について

書籍:植物由来治療薬-第3巻ねぎ(ニンニク)|乳癌
乳癌に関する記述の抜粋
乳癌の予防や治療
前癌状態のヒト乳腺細胞

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